KiiLife試乗記
スズキ
アルト ラパンX


【スペック】
全長×全幅×全高=3395×1475×1525mm▽ホイールベース=2425mm▽車重=680kg▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHC、38kW(52馬力)/6500回転、63Nm(6.4kg)/4000回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=35.6km(JC08モード)▽車両本体価格=138万9960円

【試乗車提供】
スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2015年7月9日 UP]
 女性に人気の軽乗用車、スズキのアルト・ラパンがフルモデルチェンジした。箱形を基本にしたデザインは角が丸くなり、一段とおしゃれになった。車重を120kgも軽くしたという大幅なダイエットにより、リッター35.6kmの低燃費を実現した。

女性の視点で
 新型ラパンの外観の変更点でまず目に付くのは、丸形ヘッドライトの採用。遊び心満点のSUV「ハスラー」にどことなく似ていて、一段と愛らしくなった。
 車体色はミント、ピンク、アイボリー、ベージュの4色と、そのルーフが白いツートン、それにカシス、ブラウン、ブラック、ホワイトを加えた全12色が用意されている。最上級グレードのXは、ベージュ、キャメル、ブラウンの内装色を選ぶことができる。試乗車はフレンチミントパールメタリックというパステル調の青に白いルーフを組み合わせたツートンカラーの仕様で、カタログのテーマカラーにもなっている。
 企画段階から女性の視点を取り入れているという。インテリアは「私の部屋」をテーマに、ソファやテーブル、置き時計、フォトフレームをイメージしてデザインしたそうだ。試乗車はキャメルというキルティング柄の内装で、シートは柔らかな座り心地。インパネは木目調の水平な棚があって、まさしく机のようだった。中央にはフォトフレームに見立てた7のメモリーナビゲーション(メーカーオプション)が据え付けられていた。後ほど説明するが、このナビがなかなかいい仕事をしてくれる。
 ティッシュペーパーの箱がそのまま収納できるインパネボックス(助手席側)や500mlの四角い紙パックが入るドリンクホルダー(運転席側)も女性ならではの発想。エアコンは、肌や髪に優しいイオンを発生させる「ナノイー」を採用。フロントのドアガラスは日焼けをしないように紫外線を99%カットする。
 スピードメーターの下に設けられたマルチインフォメーションディスプレーにはお知らせ機能があり、「ドアが開いています」「パーキングブレーキ解除」「ハッピーバースデイ」といった情報を画面と音声で知らせてくれる。車体のあちらこちらにちりばめられているウサギのロゴマーク「隠れラパン」も健在だ。
 わが社の女性社員に印象を聞いたところ「ベージュの明るい内装が好き」「シートやハンドルをはじめ、室内全体に高級感がある」といった反応が返ってきた。

左前輪も見える
 新車購入時にぜひとも装着しておきたいのが、メーカーオプションの全方位モニター付きスマートナビ。価格は11万8800円するが、駐車場に止める際はもちろん、狭い路地を曲がるときに左前輪の周囲が確認できたり、塀で視界を遮られた丁字路で左右の車が見えたりするので便利だ。
 フロントグリル、リアハッチ、左右のサイドミラーにカメラが取り付けてあり、合成した映像をナビのモニター画面に映し出す仕組み。表示は3種類あり、ボタンで簡単に切り替えられる。
 例えばバックで駐車する際には、車を上空から見下ろしたような映像を映し出して周囲を見渡せる。運転席からは死角になっている後方や左下の障害物はもちろん、車に近づいてきたペットや背の低い子どもの姿も確認することができる。
 「前方/後方ワイド映像」に切り替えると、左右の見通しの悪い交差点で発進する際に、接近してくる車両や人を確認できる。
 「サイド映像プラス前方/後方映像」では、狭い道路で対向車とすれ違う際に左側の車輪が脱輪しないかや、縁石などの障害物がないかを見ることができる。
 安全面では、時速30km以下で作動する衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、横滑り防止装置を全グレードに標準装備した。窓の面積が大きくて視界がいいのも安心して運転できる要素である。

120kgもダイエット
 男性の目線から見た新型ラパンの一番のニュースは、120kgもの軽量化だ。先代のラパンが800kgだったのに対して、新型ラパンは680kgまで減量している。これは、先代ラパンが重かったのではなく、新型ラパンが超軽量になったということである。
 車体の軽量化は動力性能や燃費性能に直結する。運転席に座ってアクセルを踏んだ瞬間に軽くなったことが実感できるほど軽快に走りだす。大人2人分も車重が減っているのだから当然だろう。ターボの付いていない52馬力の自然吸気エンジンでも十分な発進加速が得られる。一方で、追い越しなどの中間加速はそれほど鋭くない。軽量化によるエンジンの余力を燃費の向上に振り向けているのだろう。
 新型ラパンは、減速エネルギーで発電して加速時のエンジンの負担を軽くする「エネチャージ」やアイドリングストップの採用によりリッター35.6kmの低燃費を実現している。これは、ガソリン車トップのアルト(37.0km)に迫るもので、ハイブリッド車も顔負けである。
 おしゃれなだけでなく、車としての基本性能もしっかりしている。車体が軽いにもかかわらず足回りはきちんと動いているし、ワゴンタイプの軽乗用車に比べて重心が低いのでカーブでも安定している。ハンドルは速度が上がるにつれて重くなるタイプなので、直進安定性もいい。これで外観や内装をいかつくしたカスタムモデルがあったら、男性にも受けるかもしれないと思った。

リポータープロフィル
  【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。