KiiLife試乗記
マツダ
CX-3


【スペック】
全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm▽ホイールベース=2570mm▽車重=1260kg▽エンジン=1498t水冷直列4気筒DOHCディーゼルターボ、77kW(105馬力)/4000回転、270Nm(27・5kg)/1600〜2500回転▽燃料消費率=23.0km(軽油、JC08モード)▽車両本体価格=259万2000円

【試乗車提供】
和歌山マツダ田辺店
(田辺市新庄町2157、0739・22・8535)

[2015年5月14日 UP]
 マツダの新型車CX-3は、1.5リットルターボディーゼルを搭載した小型SUV(スポーツ用多目的車)。省燃費とハイパワーを両立したエンジンと、伸びやかなプロポーションが特長だ。

存在感たっぷり
 CX-3の実車を目の前にすると、多くの人が格好いいと思うだろう。マツダのデザインコンセプト「魂動(こどう)」の総仕上げとも言えそうだ。ベースになっている小型乗用車デミオも小さいながら個性を主張していたが、CX-3の存在感はそれを上回る。
 車体の大きさはデミオが全長4060mm、全幅1695mm、全高1500mmであるのに対して、CX-3は全長4275mm、全幅1765mm、全高1550mmと一回り大きい。しかし、室内長はデミオの1805mmに対して1810mmとわずか5mmの違い。室内の高さも運転席で950mmと、全く同じ寸法になっている。キャビンの大きさが変わらずに全長が伸びたので、一段と伸びやかなスタイルになった。長いフロントノーズと安定した下半身、小さめのキャビンというスタイルは、人に例えれば8頭身の美人である。
 悪路の走破性に影響する最低地上高は160mmで、デミオより15mm高くなったものの、兄貴分のCX-5(210mm)に比べると50mm低い。本格的なオフロードモデルではなく、オンロードを主体にした都市型のモデルなのだろう。
 エンジンは、ターボチャージャー付きのクリーンディーゼルエンジン1機種。最高出力105馬力、最大トルク27.5kgを発生する。最高出力こそ1.3〜1.5リットルのガソリンエンジンと同程度にとどまるが、トルクは2.5リットル・ガソリンエンジンに匹敵する。しかも、1600〜2500回転という低いエンジン回転で最大トルクを発生するので、市街地でも扱いやすい。
 装備によってXD、XDツーリング、XDツーリングLパッケージがあり、それぞれに前輪駆動(FF)と四輪駆動(4WD)が設定されている。ミッションは、全グレードで6速オートマチック(6AT)と6速手動(6MT)が選べる。
 価格は1.5リットルクラスのSUVとしては高めで、ベースグレードのXDで237万6000円、装備が最も充実したXDツーリングLパッケージは280万8000円(いずれもFF)になる。

強力なエンジン
 1.5リットルクリーンディーゼルは、低燃費とハイパワーを両立させた魅力的なエンジンだ。運転席に座り、プッシュ式のスタートボタンを押すと、軽やかに回りだす。車内にいる限り、ガソリンエンジンと区別がつかないほど静かである。意識すれば、ディーゼル特有の「カラカラ」という音が聞こえるが、しばらく走っていると気にならなくなる。発信加速でアクセルを大きく踏み込んでも、バスやトラックのようにエンジン音が急に大きくなることはない。
 このエンジンの美点は何といっても、低回転域での力強さだ。わずか1600回転で最大トルクを発生するので、日常の走行でエンジンのおいしいところをたっぷり味わうことができる。時速50kmで巡行しているときの回転数は1500回転。ここからアクセルを踏むと、スムーズに力強く加速する。
 素早い追い越しをかけたいときにはアクセルを少し強く踏み込めばいい。6速ATが即座にキックダウンし、あっという間に3000回転に達する。アクセラやCX-5が積む2.2リットルディーゼルエンジンのような暴力的な加速ではないが、2.5リットルガソリンエンジン並みの力強さである。パワーに余裕があるので、平地を一定速度で走っているときは、アクセルに右足を軽く置いておくだけでいい。上り坂でもアクセルを意識的に踏み増さなくてもいいので運転がとても楽だ。
 足回りはダンピングが効いていて堅めの設定。ホンダのヴェゼルほどゴツゴツしないが、デミオのディーゼルよりは堅く感じた。ハンドリングはデミオと同様に素直で、車高が高くなったことによる腰高感はなかった。CX-3、デミオのディーゼル、デミオのガソリンでハンドリングを比べると、エンジンの重量が軽いデミオのガソリンが最も軽快に走ることができる。

室内は運転席優先
 内装の仕上げは入念だ。ダッシュボードにはソフトパッドを使い、ステアリングやシフトノブは本革。シートは合成皮革とクロスを組み合わせており、ソフトに包み込むようにして体を支えてくれる。
 デミオよりも車体が大きいが室内の広さはほとんど変わらないので、身長174cmのリポーターが運転席の後ろに座ると、膝の前にはほとんど隙間がなくなる。荷室もコンパクトカーとしては狭い部類なので、後席に人を乗せる機会が多い人は実車でチェックした方がいい。
 その代わりに、ドライバーは優遇されている。右足を自然に伸ばした先にアクセルがあり、自然な運転姿勢を取ることができる。しかも、かかと部分を支点に踏み込むオルガン式のペダルを採用しているので、長時間の運転でも足首が疲れない。
 試乗車は、時速4〜30kmで動作する自動ブレーキや、側方・後方からの車両接近を警告するブラインド・スポット・モニタリングを装備。最上級のLパッケージは中高速走行時の衝突被害を軽減するスマート・ブレーキ・サポートや車線逸脱警報システムを標準装備する。クルーズコントロールは、XDツーリングが速度設定型、Lパッケージは先行車の速度に合わせて安全な車間距離を保つレーダー・クルーズ・コントロールを採用している。

リポータープロフィル
  【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。