KiiLife試乗記
ダイハツ
ロッキー


【スペック】
全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm▽ホイールベース=2525mm▽車重=980kg▽駆動方式=FF▽エンジン=996cc水冷3気筒DOHCターボ、72kW(98馬力)/6000回転、140Nm(14.3kg)/2400〜4000回転▽燃料消費率=18.6km(WLTCモード)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=200万2千円

【試乗車提供】
田辺ダイハツ販売
(田辺市東山1丁目、0739・22・2323)

[2019年12月12日 UP]
 ダイハツは、5ナンバーサイズの小型SUV(スポーツ用多目的車)「ロッキー」を発売した。全長4mを切るコンパクトな車体に広い室内空間と大きい荷室を確保。排気量1リットルのターボエンジンは力強く、1トンを切る車体を軽快に走らせる。

広い室内スペース
 ロッキーと同時にトヨタからは兄弟車「ライズ」が発売された。ダイハツが生産し、トヨタに供給している。ロッキーのフロントグリルが横長の六角形であるのに対して、ライズはボンネットからバンパーにかけて「ハ」の字に開いたデザインになっている。今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したSUV「RAV4」を小さくしたような外観は「RAV4ミニ」と呼びたくなる。
 世界的に人気のSUVだが、そのほとんどは車幅が1.7mを超える3ナンバーサイズで、1.8mを超える車も多い。「SUVに乗りたいが、日常の使い勝手を考えるともう少し小さい車が欲しい」という声に応えたのがロッキーだ。
 ダイハツの新世代の車づくりであるDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づき、プラットホーム(車台)を一新。コンパクトで小回りの利く車体に大きな室内空間と荷室スペースを実現した。
 全長3995mm、全幅1695mmという車体サイズはホンダのフィットや日産ノート、マツダのデミオといったコンパクトカーと同クラスだが、ロッキーは車高が高くて角張ったスタイルをしているので、一回り大きな車に見える。
 エンジンは、小型のワンボックスカー「トール」でデビューした1リットル3気筒ターボ。最高出力98馬力、最大トルク14.3kgと、1.5リットル自然吸気エンジン並みのパワーを発揮する。DNGAにより軽量化された車体は前輪駆動(FF)のモデルで1トンを切るので、十分な動力性能だ。
 四輪駆動の方式は、路面の状態がいいときはFFで走り、発進時や滑りやすい路面で後輪に駆動力を配分するダイナミックトルクコントロール4WD。オフロード走行に重要な最低地上高は185mmを確保している。
 ロッキーのライバルになるのはスズキの小型SUV「クロスビー」。車体の大きさは全長3760mm、全幅1670mmと、ロッキーより少し小さい。1リットルのターボエンジン(99馬力)にモーター(3.1馬力)を組み合わせたマイルドハイブリッドを採用している。クロスビーが遊び心たっぷりの軽自動車「ハスラー」のコンセプトを引き継いでいるのに対して、ロッキーは本格SUVの雰囲気を醸し出しているのが個性の違いだ。

1リットルでも力強い加速
 初対面のロッキーは、実際の寸法以上に大きく見える。四角くて力強いデザインに加えて、17インチの大径タイヤによる視覚効果も大きい。内装は黒を基調に、シートの赤い縁取りやシルバーのコンソールでアクセントを付けている。プラスチックを多用しているので決して高級ではないが、嫌みのない仕上がりになっている。
 コンパクトな車体にもかかわらず室内や荷室は広い。身長173cmのドライバーに運転席を合わせて後部座席に座ると、膝前の余裕は握り拳縦一つ分。着座位置が高めで外がよく見えるため、実際のスペース以上に開放感がある。
 荷室は幅千mm、高さ740mm、奥行き755mmあり、容量は369リットル。さらにデッキボードをはずすとその下には深さ215mm、容量80リットルのアンダーラゲージがあり、カー用品を収納したり、背の高い荷物を載せたりすることができる。
 ロッキーのアクセルを一踏みして驚いたのは発進の力強さ。とても排気量1リットルの車とは思えない加速性能だ。ターボの過給によりわずか2400回転で最大トルクを発生することに加えて、D-CVT(自動無段変速機)がこのエンジンの特性を生かすよう設定されているのだろう。CVT特有のエンジン回転が先に上がってから速度が付いてくるというくせも最小限に抑えられている。
 目線の位置が高く、前後左右とも見切りがいいので運転しやすい。安全運転の第一歩は、運転席からの視界の確保だと実感する。
 最小回転半径は、17インチタイヤ装着のグレードで5.0m、16インチタイヤのグレードで4.9mと小回りが利く。コンパクトで運転しやすいので、日常の買い物や通勤、子どもの送迎などにも活躍しそう。
 エンジンが力強いという印象は、高速道路の合流や追い越し加速でも変わらない。乗り心地の面では、路面の細かい振動は伝わってくるが室内に入ってくる騒音は1〜1.5リットルクラスの乗用車としては小さい。
 コーナリングでは、外側に車体が引っ張られるアンダーステアが感じられるが、カーブを積極的に攻める車ではないので許容範囲。高速道路の直進では、ステアリングの座りがやや甘いと感じた。そこが改善されると、日常の利用から長距離ドライブまでこなせる万能の車になるだろう。

スマホと連携、つながる機能
 ロッキーには、スマートフォンと車をつなぐ「ダイハツコネクト」が初めて採用された。事故や故障の際にセンターに接続して対応のアドバイスが受けられる「つないでサポート」、出掛けた車の位置情報を見守り者が手元のスマホで確認できる「見えるドライブ」、広い駐車場での駐車位置情報やガソリンの残りなどが確認できる「見えるマイカー」、車検や点検時期を知らせる「つないでケア」の四つの機能がある。
 また、ダイハツコネクト対応のディスプレイオーディオやカーナビの購入者を対象に、車内で使えるWi-Fi(ワイファイ)を3年間、月1GB(ギガバイト)の通信量まで無料で提供する。
 予防安全機能「スマートアシスト」は、歩行者も検知する衝突回避支援ブレーキ機能や、前方・後方の誤発進抑制機能など17機能。後方を横切る車両との接触を防止するリアトラフィックアラートと、車線変更時に斜め後方の走行車両を検知するブラインドスポットモニターを新たに設定した。
 先行車に追従走行する全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線の中央を維持するレーンキープコントロール(LKC)は上級グレードのみの装備になるので、長距離ドライブをする機会の多い人は購入に当たって、あらかじめ設定グレードを確認したい。

リポータープロフィル
  【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長