KiiLife試乗記
トヨタ
タンク


【スペック】
全長×全幅×全高=3700×1670×1735mm▽ホイールベース=2490mm▽車重=1070kg▽駆動方式=FF▽エンジン=996cc直列3気筒DOHC、51kW(69馬力)/6000回転、92Nm(9.4kg)/4400回転▽トランスミッション=CVT(自動無段変速)▽燃料消費率=24.6kg(JC08モード)▽車両本体価格=168万4800円

【試乗車提供】
ネッツトヨタ和歌山・田辺店
(田辺市新庄町1895、0739・22・4979)

[2016年12月8日 UP]
 トヨタ、ダイハツ、スバルから排気量1リットルのコンパクトなワゴン車が一斉に発売された。ダイハツが生産し、トヨタが4系列の販売店で取り扱うという力の入れようだ。軽ワゴン車を一回り大きくしたようなスペース優先のスタイルをしており、小さめの車体で広い室内空間を実現しているのが魅力。その中の一台、トヨタの「タンク」に試乗した。

ターボエンジンも
 今回発売の新型車はトヨタがタンク(トヨペット店、ネッツ店)とルーミー(トヨタ店、トヨタカローラ店)、ダイハツはトール、スバルはジャスティ。フロントのデザインに違いがあり、力強い顔つきのカスタムグレードも設定されている。
 エンジンは2種類あり、1リットル3気筒の自然吸気エンジンは最高出力69馬力。ターボチャージャー付きエンジンは1.5リットル並みの98馬力を発生する。トランスミッションは全車CVT(自動無段変速機)。燃費は自然吸気エンジン搭載車がガソリン1リットル当たり24.6km(JC08モード)、ターボは21.8kmとなっている。
 このクラスのパイオニアはスズキのソリオだ。車体の大きさや室内寸法をライバルのソリオ、軽の人気車種タントと比べてみよう。
【タンク】全長×全幅×全高=3700×1670×1735mm▽ホイールベース=2490mm▽車重=1070kg▽室内長=2180mm▽室内幅=1480mm▽室内高=1355mm
【ソリオ】全長×全幅×全高=3710×1625×1745mm▽ホイールベース=2480mm▽車重=950kg▽室内長=2515mm▽室内幅=1420mm▽室内高=1360mm
【タント】全長×全幅×全高=3395×1475×1750mm▽ホイールベース=2455mm▽車重=960kg▽室内長=2200mm▽室内幅=1350mm▽室内高=1365mm

 ソリオに対してタンクは全長で10mm短く、全幅で45mm広い。室内幅はタンクの方が60mm広い。
 いずれも前席から後席に移動できるウオークスルーを備え、後部ドアには両面スライドドアを採用しており使い勝手は互角。こういった比較をすると、車体が小さい軽のタントがタンクやソリオと同等の室内スペースを確保していることに感心する。
 動力性能を自然吸気エンジンで比べると、排気量が200cc大きいソリオが有利で、タンクを22馬力上回る91馬力を発生する。ソリオのマイルドハイブリッドは3.1馬力のモーターが加速をアシストし、燃費も27.8kmと優秀だ。さらにスズキは、タンクなど4兄弟の発売に合わせるように独自のハイブリッドシステムを搭載したモデルを追加。32.0kmの低燃費をアピールしている。
 今回は試乗できなかったが、タンクの1リットルターボエンジンの動力性能が気になるところだ。

街中で快適な走り
 試乗車は1リットル3気筒の自然吸気エンジンを搭載したタンクG"S"。エンジンはトヨタのパッソやダイハツのブーンと共通だ。最近の3気筒エンジンは4気筒と遜色ないレベルまで騒音や振動が抑えられており、海外では1リットルクラスどころか1.5リットルクラスにも3気筒が採用されているほどだ。燃焼効率が高くて省燃費に有利なことや、低速トルクが大きくなるので運転しやすいこと、軽量で生産コストが安いことなどが理由という。
 販売店をスタートするとすぐに田辺バイパスの入り口に差し掛かる。ここは緩やかな上り坂になっているので排気量の小さい車で思い通りに加速するのは難しく、自然吸気のタンクもやはり力不足を感じる。
 しかしバイパスを下りて市街地に入ると、タンクはがぜん生き生きとしてくる。40kmぐらいまでの速度ではエンジンは十分なパワーがあり、加減速もスムーズだ。ステアリングの反応も素直で、切った方向に素直に向きを変えてくれる。カーブの途中でステアリングを切り足さなければならないアンダーステアも弱めだ。
 足回りもよくできている。路面が荒れている場所でも乗り心地が良く、小さい車の軽快感を残しながら、軽自動車より1ランク上の落ち着いた走りを得ている。
 運転席からの見晴らしがいいこともタンクの特徴だ。フロントガラスはもちろん、左右のガラス面積が大きいので開放感たっぷり。良好な視界は日常の使い勝手にプラスというだけでなく安全運転にもつながる。また、後部座席も開放的なので、同乗者も快適に乗っていられるだろう。

ファミリー向けの広い室内
 タンクの室内は広々としている。リアシートは前後に最大で240mmスライドし、後方にスライドさせると足が組めるほど広い空間が広がる。これを前方にスライドさせると荷室の奥行きが広がり、大きめの荷物を積むことができる。リアシートに座って膝の前ににぎりこぶし縦一つ半の空間を設けても、荷室には60cmほどの奥行きを確保することができる。軽自動車は足元の空間を最大にすると荷室のスペースがほとんどなくなるが、さすがにリッターカーは余裕がある。
 また、このシートは2段階の操作で座面を足元に格納することが可能で、その時に荷室の床面は完全にフラットになる。
 後部座席の窓には日よけが標準装備されるなどファミリー向けの装備も充実。オプションでフロントシートの背後にテーブルを付けることもできる。
 総括すると、タンクは街中での使いやすさを追求した車だ。車体が四角くてコンパクトなので駐車場にも止める際にも四隅の見切りがいい。パワーが小さめの自然吸気エンジンでも、街中では十分な走りが得られる。
 ただし、坂道を走ったり多人数で乗車したりする機会が多い人はターボ車を選択した方がいい。最近のターボエンジンは低速から力があり、燃費の悪化も少ない。
 一方で、ターボチャージャーは高速で回転するタービンをエンジンオイルで潤滑するので、オイルはまめに交換する必要がある。メーカーの推奨で自然吸気エンジンが1万kmごとの交換なら、ターボは5千kmといった具合だ。オイルをあまり気にせずに乗りたい人はターボ車を選択しない方がいい。

リポータープロフィル
  【運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。