KiiLife試乗記
トヨタ
オーリスHV


【スペック】
全長×全幅×全高=4330×1760×1480mm▽ホイールベース=2600mm▽車重=1390kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1797cc水冷4気筒DOHC、73kW(99馬力)/5200回転、142Nm(14.5kg)/4000回転▽モーター=60kW(82馬力)、207Nm(21.1kg)▽システム最高出力=100kW(136馬力)▽燃料消費率30.4km(JC08モード)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=262万473円

【試乗車提供】
和歌山トヨペット田辺店
(田辺市稲成町234-1、0739・22・8085)

[2016年7月14日 UP]
 トヨタは、中型ハッチバック車「オーリス」にハイブリッド(HV)を追加した。排気量1.8リットルのガソリンエンジンとモーターを組み合わせて、ガソリン1リットル当たり30.4kmの燃費性能を得ている。オーリスはネッツ店で販売されてきたが、HVの追加に合わせてトヨペット店での扱いも開始した。

燃費はリッター30.4km
 オーリスはトヨタが欧州で販売している主力車種の一つで、全長4.2〜4.5m程度の「Cセグメント」と呼ばれるクラスに属する。直接のライバルは、フォルクスワーゲンのゴルフやベンツのAクラス、ボルボのV40など。国産車ではスバルのインプレッサ、マツダのアクセラなどがこのクラスに属する。
 オーリスには昨年、排気量1.2リットルのダウンサイジングターボが追加されており、ガソリンの自然吸気(1.5リットル、1.8リットル)、ガソリン・ターボ、HVという3タイプのエンジンがそろった。
 国内では新登場のオーリスHVだが、欧州では既に先代のモデルからHVが存在した。国内ではカローラやノア、シエンタなどにHVが追加されており、ようやくオーリスにも設定された。
 HVの機構は、4代目プリウスに採用された最新のものではなく、3代目プリウスに採用されていた一世代前のもの。このため燃費は新型プリウスがガソリン1リットル当たり40kmを超えているのに対して、オーリスは30.4kmにとどまっている。それでもこのクラスの乗用車としては並外れた燃費性能だ。

爽快なハンドリング
 オーリスの持ち味は、扱いやすいボディーサイズと優れたハンドリング性能。プリウスもモデルチェンジでハンドリングが大きく向上したが、ハンドルを切った時の車体の反応やカーブを回っている時の爽快感はオーリスの方が上手だ。HV用のニッケル水素電池を後部座席の下に置いて重心を低くしていることもハンドリングの良さに貢献している。
 サスペンションはスポーツカーである86を別格とすれば、トヨタの乗用車の中ではかなり堅い設定と言えそうだ。路面からは多少ごつごつした感触が伝わってくるが、後輪のサスペンションには高価なダブルウィッシュボーン式が採用されていることもあり、乗り心地は悪くない。
 HVの加速は静かで滑らかだ。熟成された技術であるだけに、モーターとエンジンの役割分担は絶妙。交通の流れに乗って走る分には、上級セダンのように振る舞ってくれる。しかし、ノーマルモードのままバイパスの合流車線で強めに加速しようとしたり、上り坂で追い越しをかけたりする場合には物足りなさを感じる。その場合には手元のスイッチでパワーモードを選択すると、エンジンとモーターをフルに使った力強い加速が得られる。
 高速走行での直進安定性に優れるのもオーリスの美点だ。ステアリングは中立付近でしっかりした手応えがあり、軽く手を添えているだけで真っすぐに走ってくれる。全長4.3mという街中で使いやすいサイズでありながら、高速道路を使っての長距離ドライブでも疲労が少ないのがこのクラスの車のいい所だ。

安全装備も設定
 トヨタは2種類の衝突回避支援パッケージを用意しており、そのうちオーリスに採用されたのはセーフティーセンスCという小型車向けの装備。単眼カメラとレーザーレーダーを組み合わせたもので、時速10〜80kmで動作する自動ブレーキや車線をはみ出しそうになった際の警報、ヘッドライトのハイビームとロービームを自動で切り替える機能などを備えている。中上級グレードには標準装備、ベースグレードは5万4千円でオプション装着できる。
 プリウスよりも上のクラスにはミリ波レーダーを加えたセーフティーセンスPが搭載されている。Cとの大きな違いは歩行者を検知するかどうか。またPには、高速道路などで先行車と一定の車間距離を保って走り続けることができるレーダークルーズコントロールも備わっている。長距離移動が得意なオーリスには、Pを採用してほしかった。

3種類のエンジン
 HVの発売に合わせて、1.2リットルターボエンジン搭載車にスポーティーなRSパッケージ(車両本体価格259万37円)が追加された。最高出力116馬力のこのエンジンは、1500〜4000回転という幅広い回転域で1.8リットル自然吸気エンジン並みの18.9kgという最大トルクを発揮する。
 昨年発売の120Tが木目調のインパネや、本革と合成皮革を組み合わせたシートなど内装を豪華にしているのに対して、RSパッケージは専用の17インチ・アルミホイールやスポイラーを装備するスポーティーな仕様になっている。
 1.8リットル自然吸気エンジン(143馬力、17.6kg)を積む180S(車両本体価格237万6千円)の燃費がガソリン1リットル当たり16.2km(JC08モード)であるのに対して、ターボは19.4kmと2割ほど上回る。低い回転からの加速もターボの方が力強いという。その代償として、使用燃料はハイオクになる。
 自然吸気、ターボ、HVのどれを選択するかは使用条件や好みによるので、購入を検討するのなら3タイプとも試乗してみたい。

リポータープロフィル
  【長瀬稚春】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。