KiiLife試乗記
ダイハツ
ムーヴ・キャンバス


【スペック】
GメイクアップSAII 全長×全幅×全高=3395×1475×1655mm▽ホイールベース=2455mm▽車重=920kg▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHC、38kW(52馬力)/6800回転、60Nm(6.1kg)/5200回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=28.6km(JC08モード)▽車両本体価格=154万4400円(2色のストライプスカラーはメーカーオプションで6万4800円高)

【試乗車提供】
田辺ダイハツ販売
(田辺市東山1丁目、0739・22・2323)

[2016年10月13日 UP]
 ダイハツのムーヴ・キャンバスは、女性向けに企画・開発された新型車。丸みを帯びた愛らしいデザインに加えて、使いやすい両側スライドドアや買い物に便利な収納スペースなど工夫がいっぱいだ。

愛らしいツートン
 キャンバスという名称は「CAN=何でもできる」と「BUS=バスのようなデザイン」を組み合わせたものだそうだ。バスと聞いてイメージが重なるのが1950年代から70年代にかけて生産されたフォルクスワーゲンの「ワーゲン・バス」。やはり丸みを帯びた愛らしい外観をしており、中古車は今でも人気がある。
 キャンバスのボディーカラーは、ストライプスカラー(メーカーオプション)と呼ばれるツートンカラーが8種類、モノトーンが9種類の計17色。試乗車は、パールホワイトとミントメタリックの組み合わせだった。男性が運転していると気恥ずかしいほどおしゃれな車を会社の駐車場に止め、女性社員に感想を聞いてみた。
 彼女らはキャンバスを一目見て「かわいい」を連発。それからドアを開けて収納のチェックが始まった。好評だったのは、リアシートの下からするする出てくる「置きラクボックス」という収納スペース。マジックテープを利用して中敷きを立てるとバスケットのような形になり、直接床に置きたくないものや割れやすいものを安心して積むことができる。「ケーキを持ち帰るのに使えそう」「卵や瓶も安心」とすぐに使い方を思い浮かべていた。
 履物を入れておくことができる助手席下のアンダートレイも、靴を履き替える機会が多い女性向けの車ならでは。もちろん、インパネ周辺の収納はたっぷりある。女性陣は、買い物袋をつり下げるフックの場所まで丹念にチェックしていた。
 もう一つ好評だったのは、ボディーカラーと同じ色があしらわれたシートクロス(販売店オプション)。内装にマッチしているだけでなく、子どもが汚しても簡単にはずして手洗いできる点が評価された。
 ところで、女性がみんなかわいらしい車が好きかというとそうでもないようで「ツートンは目立ちすぎて恥ずかしい」という声もあった。そういった人はぐっと落ち着いたソリッドカラーを選べばいいだろう。

両側スライドドア採用
 キャンバスのボディーサイズは室内の圧倒的な広さを誇るタントと、スタンダードな寸法のムーヴのちょうど中間。全長と全幅はいずれも軽自動車の規格いっぱいだが、全高はタントの1750mm、ムーヴの1630mmに対してキャンバスは1655mm、室内長はタントの2200mm、ムーヴの2080mmに対してキャンバスは2115mmとなっている。このほどよい広さと使い勝手のいい両側スライドドアの組み合わせがキャンバスの持ち味だ。
 着座位置と目線の高さは3車とも共通で、運転席に座ったときの見晴らしはいい。キャンバスではさらに、ダイハツ車としては初のパノラマモニターがオプション設定された。
 車の前後左右に取り付けたカメラの映像を合成して、自車を真上から見下ろしたようにナビの画面に映し出す。画面は、運転の状態に応じて二種類を切り替え表示することができる。例えば狭い道で対向車とすれ違うときには左右の前輪付近を、駐車場で左側を壁ぎりぎりに寄せたいときには左側面と後ろの映像といった具合だ。この機能には女性陣も興味津々だった。
 安全運転の支援では、カーブや交差点で進行方向をヘッドランプが照らすステアリング連動ヘッドランプ(AFS)を軽自動車で初めて採用した。夜間、カーブの先の歩行者が確認しやすいなど安全運転につながる機能で、普通車でもようやく採用が始まったばかりだ。
 衝突回避支援システム「スマートアシストII」は、時速4〜50kmで走行中に前方の車両と衝突の危険が高まったときには緊急ブレーキで減速する。また、歩行者を感知して警報を出す機能がある。歩行者に対して緊急ブレーキは作動しない。

乗り心地もしっくり
 キャンバスのエンジンは排気量660cc、最高出力52馬力の自然吸気エンジン1種類。出力の高いターボエンジンの設定はない。
 このエンジンは低速のトルクが十分にあり、発進はスムーズだ。走行中のロードノイズはそれなりに侵入してくるが耳障りな音質ではないので、幹線道路から市街地まで快適に走ることができる。足回りはしなやかな設定で、乗り心地も良かった。車体の重心はやや高いが、カーブで外側に引っ張られるアンダーステアは弱めだった。
 試乗車の内装は、ツートンの外装に合わせてミントとベージュがあしらわれており、おしゃれな部屋ごと移動しているような気分。こういった内装はともすると安っぽくなりがちだが、しっくりした仕上がりだった。
 メーター類はドライバーの正面からやや左側に配置されているセンターメーター方式。真ん中に大きなスピードメーターがあり、その右側に一回り小さいタコメーターがある。左側の燃料計はドライバーからの距離が遠いので、少し見づらいかもしれない。
 女性向けに開発されたキャンバスだが、もちろん男性も運転する。その場合気になるのが、運転席の座面がやや短いこと。女性が座りやすいサイズのようで、私には太もものサポートが少し足らなかった。長時間の運転は疲れるかもしれない。

リポータープロフィル
  【長瀬稚春】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。